2007-07-24

IBMのTransformation推進役:Linda Sanford

IBMのService Science研究について先にご紹介したが、Service Science研究成果は、IBMが提唱する21世紀に生き残る企業が目指すべき”Innovation“に関する取り組みを集めたページの一部となっている。

その中に、実業界におけるInnovation事例を紹介する項目があり、IBMの社内改革担当役員であるLinda Sanford, SVPがMITに出向いて講演したVideoが掲載されている。IBM社内をどう改革したか、参考になるので紹介する。

ここで、なぜMITに出向いてIBMの役員が講演するかというと、IBMで長くマーケティングを担当してきた、Irving Wladawsky-Berger氏がリタイアしてMIT教授に就任したことが理由と推察される。

講演者のLinda Sanford, SVPがメインフレームやストレージ事業担当役員として社内改革を推進し、Irving Wladawsky-Berger, VPが社内管理効率化を優先する縦組織から、顧客に軸足を移してグローバルサービス提供ができるよう、顧客接点をより顧客よりに変えていくマーケティング改革担当、との役割分担だったという。

Irving Wladawsky-Berger現MIT教授のBlogは、毎週月曜日更新され、大変興味深い情報が発信されています。ぜひこちらもご参照ください。

なお、Linda Sanford, SVPの講演Video(2006年10月17日:講演時間90分)はこちら、で現物をご確認ください。ちなみに、Linda Sanfordは2006年1月に本を出版しています。おもしろそうです。Let Go To Grow: Escaping The Commodity Trap (Ibm Press)

-----------Linda Sanfordの講演概要-------------

1. IBM社内のトランスフォーメーションの背景(21世紀に生き残るには)

①IBMをハードウエアの会社からサービス会社につくりかえる
②IBMは世界各国にミニIBMをつくり、人事・販売・経理・開発・生産・保守まで国別に別々のシステムをつくり事業運営するマルチナショナルカンバニーで、重複の無駄があった
③ハードウエア事業は、コモディティ化が進み、価格競争に晒され、利益率が低下する一方、世界経済はサービス産業比率が増大し、サービス事業の増大なくしてトップラインの増大はない
④技術革新、特にインターネット革命に乗り遅れては生き残れない。コモディティ化による価格競争が激化する以前の1995年から1998年に間にFortune500社に選ばれた1008社の内、今も生き残っている企業は16%しかない(84%は会社倒産)という統計がある
⑤IBMはコマンド・コントールによる社内管理コスト最小化を図る階層型組織の会社であったが、21世紀、グローバル化が進展し、技術革新が進む中、会社の構造自体を見直し、他社・顧客とも連携して、他社に一歩先んじたサービスを生み出すイノベーションを起こせる会社だけが生き残れる。(そうしないと、急速な変化、先行き不透明な世界で生き残れない)
⑥キーワード
•オープン
•コラボレーション
•部門の壁を打ち破る(業際)
•グローバル

2.IBM内でイノベーションを起こす試み
①社内でイノベーションを起こすエンジンとは
•製品
•サービス
•業務プロセス
•ビジネスモデル
•マネジメント・企業文化
•ポリシー
従来はなにからなにまで全部社内で自らやることで管理コストを最小化したが、今は人事、経理業務など専門の社外サービスを利用するなどして、自ら強みを発揮できる業務に特化し、他社よりも早く変化を生み出し競争力につなげる、ビジネスモデルのイノベーションが最も重要と考えている

②IBMのトランスフォーメーションから学んだこと
•IBMは2002年から第2段階のトランスフォーメーションを開始した
•業務プロセス変革と、技術革新と、会社価値(Value-based Culture)明確化の3本立てで同時に改革を推進することが重要
•会社価値明確化とは、例えば売上利益のような業績もさることながら、プロセスを改善することにフォーカスするようインセンティブシステムを変更すること

③IBMのビジネスモデル変革
•従来はBack Officeの基幹業務に管理の重点があったが、これをFront Officeに軸足をうつすこと
•SCMコストの分析、見える化はかなりできたが、顧客、売上増大に対する分析、見える化ができていない
•どうすれば売上増大が図れるか、他社、市場平均を上回る売上成長を実現できるかが分析できるようにし、セールスリソース配置の最適化、顧客カバレッジの最適化が図れるようにすることが必須
•IBMはそのために、セールスの前線に立つ従業員に、必要な会社経営情報を開示し、自らの判断で顧客へよりよい対応サービス提供に向けた行動が取れるように、前線社員のエンパワーメントを図った
•一方、back office業務は徹底して業務標準化を図り、シェアードサービス化した
•人事はノースカロアイナローリーに集約、経理はブラジルに集約化した
•次に、グローバルに社内リソースを活用できるようなしくみをつくった
•そのために、いつでもどこでも業務ができるように業務環境を整備した
•最後にコマンドコントロールに変わる業務遂行を支える基本として、会社価値を従業員全員に徹底し、業務指示によって動くのではなく、会社価値によって今何をすべきか判断できるようにした
•2006年のCEOサーベイ結果を見ても、50%を越える世界のCEOはイノベーションが社外との連携から起きると考えている
•自社の社員がイノベーションを起こすとの期待は一番大きいものの、次いで顧客、ビジネスパートナーとの連携から起きると考えており、社内の研究開発から起きるとの期待より、社外連携への期待の方が大きい
•こうした社外連携によるイノベーションを実現するためにも、第一線の現場従業員が顧客やビジネスパートナーと迅速に行動できる、自ら判断して行動できることがイノベーションカンパニーになる必須要件である

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