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2008-06-24

ターシャ・チューダーの思い出






きょうNew York Timesを見ていて、先週ダラスに出張している間に、バーモントでひっそりと暮らしていた絵本作家のターサ・チューダーが亡くなったことを知りました。

時差ぼけのため朝4時から目が覚めて、ぼんやりと毎週購読しているNew York TimesのBook Reviewメールを見ていて、ターシャ・チューダーが6/18にバーモントの自宅で亡くなったことを知りました。92歳という高齢ですが、ショックでした。

バーモントの広大な敷地の家で、ローハスな生活を営む姿をNHKのドキュメンタリーで見たことがあります。語り口がもの静かで、とても印象的でした。メモリアルサイトには、毎日たくさんの哀悼のことばが世界中から寄せられています。

2008-01-14

アーシュラ・K・ル=グウィンのゲド戦記を読んでいます







今年最初に読んだ本は、アーシュラ・K・ル=グウィンのゲド戦記第二巻、The Tombs of Atuan。

第一巻を読んだのは2年前、それからずっと読めないまま積読の一冊だった本でしたが、正月から読み始めてとうとう読み通すことができました。

実は、写真の3冊のペーパーバックは、1994年ポートランド在住の時にPowell's Bookstoreで購入したもの。この本屋は西海岸最大の売り場面積を誇るといわれている書店で、ポートランドに数店店舗展開していて、オレゴニアンが誇りにしている本屋です。売り場は、子ども絵本コーナーからはじまって、SF専門のコーナーもあり、とにかく品揃えが豊富です。

ゲド戦記の著者、アーシュラ・K・ル=グウィンも実はポートランド在住の作家ということもあり、アーシュラ・K・ル=グウィンの著作コーナーがあるぐらい人気作家となっています。

購入してから10年以上ほおっておいたわけですから、気にはなっているものの、私にとってはとっつきにくい作家の一人だったわけです。家族が先行してこの本を読んで、おもしろいと紹介してくれたので、いよいよ読む気になったわけです。

今、第3作目を読んでいます。ポートランドのような大自然の中で、冬のみぞれが降る寒い日に、暖炉の明かりでゆったりとこの本を読んだら、いいだろうなあと感じています。

家族が一番好きな一文を以下に引用させていただきます。原文はとても詩的でリズムがなんともいえません。

ことばは沈黙に
光は闇に
生は死の中にこそあるものなれ

Only in silence the word,
only in dark the light,
only in dying life:


第一巻の最終章、The Open Sea、を著者自身が朗読しているMP3ファイルがアーシュラ・K・ル=グウィン公式サイトからダウンロードできます。すばらしいですよ。ぜひ、お試しください。

2008-01-13

NHKきょうの料理:平野レミさんのしじみのおみそれパスタ





NHK今日の料理は、わたしにとって必見のテレビ番組であり、暇さえあれば食い入るように見て、毎日の料理の参考にさせていただいています。中でも、後藤 繁榮(ごとう しげよし)アナウンサー司会の番組は、ほのぼのとした語り口と時々でるおやじギャグが、一日の疲れを癒してくれます。

1月10日放送の平野レミさんとの掛け合い漫才よろしくの番組は、最近見た中でも白眉のできだったと思います。平野レミさんはわたしの注目する料理人の一人。彼女がつくる料理、どれも「おいしいですよおー、ねーえ食べて食べて.....」の語り口で、すべておいしさ抜群に思えてくる不思議な魅力を持っています。

「しじみのおみそれパスタ」は、フライパン一つでつくるおしいパスタ料理で、わたしに打って付けの一品でした。しじみをフライパンに入れ、水から煮込んで出汁をだし、それにパスタをゆでずに入れ、煮込んでしじみの旨みをパスタにしみこませる。これを味噌とバター味で仕上げるという簡単なもの。いいですね...ということで即実行。

今晩は、しじみのおみそれパスタならぬ、あさりとほたてのおみそれパスタにしました。丁度、連れ合いの誕生祝い。おいしいフランスパンのバケット、チーズに、頂いた甲州ワインで、お祝いしました。

味噌味のパスタはやはり、甲州ワインが合うようです。よい誕生日のお祝いができました。

 

2007-12-29

今年感動したコト・モノのランキング

今年、出会って感動したことを以下リストしてみます。すでにこのBlogでも紹介させていただいていますので、1年の集大成となるかと思います。

1.今年出会った人
岡田全日本サッカー監督の講演は、まさに話に引き込まれて、あっという間の1時間半でした。

2.今年一押しの本
Thomas Friedman, The World is Flatは600ページを越える大著ですが、自分の知らない世界を示してくれました。

3.今年の旅
信州丸子の知人を訪ねた旅で、わたしたちをいつも支えてくれている人びとの温かさを改めて知りました。

4.今年の料理
・サンタクララで食べたベトナム料理は、やはり日本にはない、すばらしいものでした。

5.今年感動した映画
・品川プリンスシネマのゆったりした椅子で観たHarry Potter and the Order of the Phoenixが、今年映画館で見た唯一の映画でした。

6.今年出会ったBlog
・ハーバード・ビジネス・レビューの編集者だったニコラス・カーのBlog:Rough Typeはとても刺激的でした。また、著書のDoes IT Matter?も今年印象に残った本でした。

7.今年楽しんだ音楽
・Blogで紹介したRodrigo y Gabrielaは、すごい音楽ですが、一番何度も聴いたのは、ケアリー・レイチェルのレイハリア、ハワイアンの名曲です。マウイで過ごした何回かのゆったりした時間の流れを伝えてくれる放送局もご紹介しました。

8.今年堪能したDVD
のだめカンタービレで、家族一同こころを癒されました。

2007-11-26

芭蕉の句碑から調べたら!!


偶然、東北自動車道のサービスエリアで芭蕉の句碑を見つけ、なにげなくシャッターを切りました。

小春日和の昨日、「奥の細道」の文庫を取り出して眺めたり、句碑の写真に文字を入れたりしていたら、これまた偶然インターネット上には実にたくさんの芭蕉に関する情報が整理されていることがわかりました。

「奥の細道」に関しては、岩波文庫をはるかに越える情報が手に入ります。特に、以下の「おくのほそ道総合データベース」は充実しているようです。芭蕉の年表、旅のルート、訪れた場所を説明する写真や文章、句碑のデータベースなどなど、驚きました。

せかっく芭蕉ゆかりの地、黒羽町にも行ったのですから、芭蕉記念館に立ち寄ればよかったと後悔しています。次の機会にはぜひ、訪問したいと思います。

2007-11-10

この頃のわたし


「フラット化する世界」にはまっていることは、先に書きましたが、この本の著者トーマス・フリードマンが600ページを越える分厚い本の中で、今世界で起きていることを具体的に登場人物の名前を挙げて、また訪問した施設や会社、そこで生きて働く人の名前を挙げて、自分が目の当たりにした現実を生き生きと描いていることに本当に驚いています。

最終章は、ベルリンの壁が崩壊した記念日である11/9と、ワールドトレードセンターが倒壊した日の9/11、世界が大きく動いた2つの日、11/9(eleven-nine)と9/11(nine-eleven)、両方の日を体験したわたしたちがこれからの日々をどう生きていくべきかを自らに問うています。


Does your society have more memories than dreams or more dreams than memories?


このことばに出会ったとき、ここ半年、このBlogを書くことを含めて、自分は過去何をやってきたかという記憶の整理をしてきたつもりが、本当は将来の夢が語れないために、過去に埋没していたのかもしれないと思わされました。

著者は、最初にフラット化する世界の特徴を以下の10か条にまとめています。
1)Flatter#1. 11/9/89
2)Flatter#2. 8/9/95
3)Flatter#3. Work Flow Software
4)Flatter#4. Uploading
5)Flatter#5. Outsourcing
6)Flatter#6. Offshoring
7)Flatter#7. Supply-Chaining
8)Flatter#8. Insourcing
9)Flatter#9. In-forming
10)Flatter#10. The Steroids

著者はその上で、ではアメリカはどうするか、これから発展する国はどうするか、会社はどうするか、あなたはどうするか、という流れでフラット化する世界を見つめます。

会社はどうするかの章には、次のような9つのルールが示されています。深く納得する内容ばかりです。かみしめたいと思います。

Rule #1: When the world is flat, whatever can be done will be done. The only question is whether it will be done by you or to you.

Rule #2: This is an outgrowth of rule#1. Because we are in a world where whatever can be done will be done, the most important competition today is between you and your own imagination.

Rule #3: And the small shall act big... One way small companies flourish in the flat world is by learning to act really big. Imagination is necessary, but not sufficient. You have to be able to implement what you imagine. And the key to being small and acting big is being quick to take advantage of all the new tools for collaboration to reach farther, faster, wider, and deeper.

Rule #4: And the big shall act small...One way that big companies learn to flourish in the flat world is by learning how to act really smally by enabling their customers to act really big.

Rule #5: The best companies are the best collaborators. In the flat world, more and more business will be done through collaborations within and between companies, for a very simple reason: The next layers of value creation - whether in technology, marketing, biomedicine, or manufacturing - are becoming so complex that no single firm or department is going to be able to master them alone.

Rule #6: In a flat world, the best companies stay healthy by getting regular chest X-rays and then selling the results to their clients.

Rule #7: The best companies outsource to win, not to shrink. They outsource to innovate faster and more cheaply in order to grow larger, gain markete share, and hire more and different specialists - not to save money by firing more people.

Rule #8: HOW you do things as a company matters more today than ever.

Rule #9: When the world goes flat - and you are feeling flattered - reach for a shovel and dig inside yourself. Don't try to build walls.

2007-10-27

注目すべきBlogger30人を取り上げた本

今度は、"Blogging Heros"という今年12月に出版予定の本で見る注目すべき30人のBlogger List。

The Long TailのChris AndersonのBlogで見たのですが、出版社はインタビューした30人のBloggerに、すでに無料でその章だけpdfファイルを提供する権利を付与しているようです。

ちなみに、Chris AndersonのBlogから、第2章のクリス・アンダーソンの章のpdfファイルがダウンロードできます。出版前から著者やインタビューした人のBlogを通して、本が話題に上ること、これがWeb2.0のすごさかもしれません。



本の章立ては以下の通り。

Blogging Heroes is a book by Michael A. Banks
comprised of interviews with thirty prominent bloggers.

[edit]
Overview
The book tries to uncover the methods, strategies, and
philosophies
that allowed each of these bloggers to set their blogs apart
from the millions
of other blogs that exist.
There are thirty bloggers
profiled in the
book:
Dave Taylor
Grant Robertson, the editor of
Download Squad
Chris
Anderson
(writer)
, the Editor-in-Chief of Wired Magazine and the author of
[The Long Tail]
Gina Trapani of Lifehacker
Ina Steiner,
the editor of AuctionBytes
Mary Jo Foley, a well-known Microsoft
watcher
David
Rothman of the non-profit operation
Frank
Warren

Mark
Fraunfelder of BoingBoing
Peter Rojas of Engadget
John
Neff
Deborah Petersen
Robert Scoble, AKA Scobleizer,
formerly of Microsoft, currently VP of
Media Development for PodTech.net
Ken Fisher
Joel Comm,
Internet entrepreneur and the editor of JoelComm.com
Brian Lam
Kristin
Darguzas
Chris Grant
Scott McNulty of TUAW
Philipp Lenssen
Brad
Hill
Steve Rubel
Rebecca
Lieb
Deidre Woollard
Mike Masnick
Gary Lee
Richard
MacManus
Eric T. of Internet Duct Tape
Victor Agreda
Steve
Garfield

2007-10-24

とにかく面白い:トム・レーラーとは何者??

YouTubeを覗いていると、思わぬ見っけものにぶち当たる。
トム・レーラーの変幻自在、独創的な歌をお聞きください。(画面の⇒をクリックすると音楽と映像がスタートします)題して「元素記号の歌?」

映像と音楽が相まって、ミュージックというジャンルを越えた新しい芸術が生まれている。ウーン、おもしろい。



いったい、この人はどのような人かと調べたら、ウィキペディアでは、次のように紹介されていた。

トム・レーラー(Tom Lehrer, 1928年4月9日 - )は、アメリカ合衆国の歌手。ハーバード大学教授兼弾き語りで風刺ソングを歌う。

NASAの宇宙計画に膨大な予算がつぎ込まれ社会保障政策がなおざりにされている現状を憂いて「ヴェルナー・フォン・ブラウンの歌」を歌い、1950年代にヒットした。NASAにおけるジェミニ・アポロ両計画は膨大な予算を必要とした。これは全科学予算の多くを吸収するもので、当時アカデミズムにおいて、問題を引き起こした。


[編集] 代表作
「公園の鳩に毒を」
「ヴェルナー・フォン・ブラウンの歌」That Was The Year That Was (1965)

2007-10-13

もう90万人が感動したスティーブ・ジョブスの演説

スティーブジョブスが2005年6月にスタンフォード大学卒業式で講演した映像が、YouTubeやiTunes Uに公開されていて、すでにYouTubeの映像を見た人は90万人を越えている。

わたしはiTunes Uで今日はじめて見た。感動した!!!

卒業して社会に巣立っていく若い人たちへの最高のことばだったのではないかと思う。講演の英文もスタンフォード大学のサイトで公開されている。また、これを聞いて感動した日本の聴衆の方と思われるが、サイトに日本語に翻訳した文章を掲載されている。

以下は、今津英世さんのサイトから再掲させていただいた。

今日は、スティーブ・ジョブスに元気をもらった。昨日のスランプ気分が吹き飛んでしまった。ありがとう!!!

2年前にメディアをこのニュースが駆け巡ったに違いない。インターネットを流れる情報は毎日使い捨てられるのかなあ、と感じていたが、こうしたすばらしいものはやはり残るし、残ったものを少し遅れて再吟味することも大切、と痛感もした。


---以下は、今津英世さんのサイトからの転載原稿-----


「たまらなく好きなものを見つけなければならない」ジョブズは言った。

以下は2005年6月12日の卒業式で、アップルコンピューターとピクサーアニメーションスタジオのCEO、スティーブ・ジョブズが行なったスピーチの原稿である。

世界最高の大学の1つを卒業する皆と今日一緒に居られて光栄に思う。私は大学を卒業したことがない。本当のところ、これは私にとって最も大学卒業に近い体験だ。 今日は皆に私の人生から3つの話をしたい。それだけだ。大したことじゃない。3つだけだ。

最初の話は点をつなぐことについて。

私はリード大学を6ヶ月で中退したが、更に1年半ほど後に完全に辞めるまで、もぐりの学生として大学に顔を出していた。ではなぜ中退したのか。

話は私が生まれる前に遡る。私の産みの母は若い未婚の大学院生で私を養子に出すと決めていた。大学卒の人が養父母になるべきだととても強く思っていたので、私が生まれると同時に弁護士夫妻の養子になるよう万事整っていた。ただし、私が生まれるとその夫妻は女の子が欲しかったと土壇場になって決めたことを除いては。そこで待機者リストに載っていた私の両親は夜中に電話を受け、「望んでいなかった男の子が生まれました。この子を養子に欲しいですか?」と聞かれた。両親は「もちろんです」と答えた。産みの母はその後、私の母は大学を卒業していないし、私の父は高校を卒業していないことを知り、最終的な養子縁組の書類に署名することを拒んだ。何ヶ月かして私の両親が私を大学にやると約束した時点で産みの母はやっと態度を緩めた。

そして17年後私は実際に大学に通った。しかし、私は無邪気にもスタンフォードとほとんど同じくらいお金のかかる大学を選び、労働者階級の両親の蓄えはすべて大学の授業料に使われていた。6ヵ月後私はそれに価値が見出せなかった。私は人生で何をしたいか見当も付かなかったし、大学がそれを見つけるのにどう役に立つかも分からなかった。そして、その時点で私は両親がそれまでに貯めたすべてのお金を食いつくしつつあった。そこで中退を決意し、万事問題ないと信じることにした。その時はとても不安だったが、振り返って見ればそれはこれまでにした最良の決断の1つだった。中退した瞬間から興味を持てない必須科目の授業を止め、面白そうなものに出席し始めることができた。

夢のようなことばかりではなかった。寮に自分の部屋はないので友達の部屋の床で寝て、コークの瓶を何本も店に返して1本5セントを受け取って食べ物を買い、クリシュナ 教の寺院で1週間に1回のまともな食事をとるために毎週日曜日の夜、街を横断して7マイル歩くことも厭わなかった。そんな日々がたまらなく好きだった。そして、自分の興味と直感に従った結果出くわしたものの多くは、その後、お金に換えがたいものとなった。たとえばこうだ。

当時のリード大学はたぶん、この国で最高の文字芸術(calligraphy)の授業を行っていた。キャンパス中のすべてのポスター、すべての引き出しのラベルが美しく手書きされていた。私は中退していて普通の授業を受ける必要はなかったので、文字芸術の授業を取ってその手法を学んだ。セリフとサンセリフの書体について、文字の組み合わせによって文字間のスペースを変えることについて、素晴らしい印刷物は何が素晴らしいのか、を学んだ。それは美しく、歴史的で、科学では捉えられない芸術的繊細さで、私には魅力的だった。

これらのどれも私の人生で実際に活用する見込みはなかった。しかし10年後最初のマッキントッシュを設計しているときにそれが私に蘇ってきた。そしてそれをすべてマッキントッシュの設計に取り入れた。マッキントッシュは美しい印刷技術を組み込んだ最初のコンピューターとなった。私が大学を中退してその授業を受けていなければ、マックが複数の書体やプロポーショナルフォントを持つことはなかっただろう。そしてウィンドウズはマックをコピーしただけなので、どのパソコンも持たなかっただろう。私が大学を中退しなかったら、その文字芸術の授業を受けなかっただろうし、パソコンは現在のように素晴らしい印刷技術を備えることはなかったかも知れない。もちろん私が大学に居たときに先を見越して点をつなぐことは不可能だった。しかし10年後に振り返ると、とてもとても明白だった。

繰り返す。先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何らかの形で点がつながると信じなければならない。何かを信じなければならない。直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。この手法が私を裏切ったことは一度もなく、私の人生に大きな違いをもたらした。

2番目の話は大切なものとそれを失うことについて。

私は幸運だった。人生の早い時点でたまらなく好きなことを見つけた。20歳のとき私は実家の車庫でウォズといっしょにアップルを始めた。私たちは懸命に働いて、10年でアップルは車庫のたった2人から4000人以上が働く20億ドル企業になった。1年前に私たちの最高の創造物であるマッキントッシュを出したばかりで、私は30歳になったばかりだった。そして私は首になった。どうしたら自分が作った会社を首になれるかって?そう、会社が成長する過程で一緒に会社を経営するのにとても才能のあると思えた人を雇い、最初の1年ほどはうまくいった。しかしその後、将来のビジョンが分かれ始め最終的に仲たがいとなった。そうなったとき取締役会は彼の側に付いた。それで私は30歳にして失職した。しかも、とてもおおっぴらに。私は大人としての人生全体の中心だったものを失い、それは衝撃的だった。

何ヶ月か何をすべきか全く分からなかった。一世代前の起業家達を失望させたのではないかと感じた。私に渡されつつあったバトンを落としてしまったと。デービッド・パッカードとボブ・ノイスと会った。そして、めちゃくちゃにしてしまったことを謝ろうとした。私はよく知られた落伍者となり、シリコンバレーから逃げることも考えた。しかし、何かが徐々に私の中で湧き上がってきた。自分がしてきたことが、まだたまらなく好きだった。アップルでの出来事はほんの少しの影響も与えなかった。私は拒絶されたが、まだたまらなく好きだった。そして私はやり直すことを決意した。

そのときには分からなかったが、アップルを首になることは私に起こり得る最善のことだった。成功していることによる重圧は、再び新参者となったことによる軽快さで置き換えられ、何事にも確信の度合いが減った。私は人生で最も創造性豊かな時期へと解き放たれた。

それから5年間、私はNeXTという会社を起こし、もう1つPixarという会社も起こし、素晴らしい女性と恋に落ち結婚した。Pixarは世界初のコンピューターアニメーションの長編映画、トイストーリーを製作するまでになり、現在最も成功しているアニメーション制作会社だ。驚くべき事態の展開により、アップルはNeXTを買収し、私はアップルに戻り、NeXTで開発された技術は現在進行中のアップルのルネッサンスの中核をなしている。そして、ローレンスと私は素晴らしい家庭を築いている。

私がアップルを首にならかったら、これらのことは1つも起こらなかったと私は確信している。ひどい味の薬だったが、この患者には必要だったのだと思う。人生は時にレンガで頭を殴る。信じることを止めてはいけない。私は自分がしていることがたまらなく好きだ。それが私を動かし続けている唯一のものだと堅く信じている。たまらなく好きなことを見つけなければならない。そしてそれは仕事についても愛する人についても真実だ。仕事は人生の大きな部分を占めることになり、真に満足を得る唯一の方法は偉大な仕事だと信じることをすることだ。そして偉大な仕事をする唯一の方法は自分がしていることをたまらなく好きになることだ。まだ見つけていないなら探し続けなさい。妥協は禁物だ。核心に触れることはすべてそうであるように、それを見つければ分かる。そして素晴らしい関係は常にそうであるように、それは年を経るにつけてどんどん良くなっていく。だから見つかるまで探し続けなさい。妥協は禁物だ。

3番目の話は死についてだ。

17歳のとき以下のような引用文を読んだ。「毎日を人生最後の日であるかのように生きていれば、いつか必ずひとかどの人物になれる」。私は感銘を受け、それ以来33年間毎朝鏡を見て自問している。「今日が人生最後の日だとしたら、私は今日する予定のことをしたいと思うだろうか」。そしてその答えがいいえであることが長く続きすぎるたびに、私は何かを変える必要を悟った。

自分が間もなく死ぬことを覚えておくことは人生の重要な決断を助けてくれる私が知る限り最も重要な道具だ。なぜならほとんどすべてのこと、つまり、他の人からの期待や、あらゆる種類のプライド、恥や失敗に対するいろいろな恐れ、これらのことは死を前にしては消えてしまい、真に重要なことだけが残るからだ。いつかは死ぬということを覚えておくことは落とし穴を避けるための私が知る最善の方法である。何かを失うと考えてしまう落とし穴を。あなたはもう丸裸だ。自分の心のままに行動しない理由はない。

約1年前私はガンと診断された。朝7:30にスキャンを受け、膵臓にはっきりと腫瘍が映っていた。私は膵臓とは何かも知らなかった。医者達はこれはほぼ間違いなく治癒しない種類のガンだと告げ、3ヶ月から6ヶ月より長くは生きられないと覚悟するように言った。医者は家に帰って身辺整理をするように勧めた。これは医者の言葉で死の準備をせよとのことだ。子供にこれから10年間の間に教えようと思っていたことすべてをたったの数ヶ月で教えろということだ。可能な限り家族が困らないように万事準備が整っていることを確かめておけということだ。別れの言葉を言っておくようにということだ。

私は一日中その診断を受け入れて過ごした。夜になって生体検査を受けた。つまり、内視鏡を喉、胃、腸を通して膵臓に針を刺し腫瘍から何個か細胞を採取したのだ。私は鎮静剤で眠っていたが妻もそこに居たのでその時の様子を教えてくれた。医者達は細胞を顕微鏡で見ると叫び出したそうだ。なぜなら非常に稀な形体の膵臓ガンで手術で治癒可能なものと判明したからだ。私は手術を受け今は全快している。

これはこれまでで最も死に接近した体験だ。そして何十年かに渡ってこれが最接近であり続けて欲しいと願っている。この体験を経て、死が有用ではあるが純粋に知性的な概念であった時よりは若干強い自信を持って次のことを言うことができる。

死を望む者はいない。天国へ行くことを望む人でさえ、そのために死にたいとは思わない。それでもなお死は我々すべてが共有する運命だ。それを免れた者はいない。そしてそうあるべきなのだ。なぜなら死はほぼ間違いなく生命による最高の発明だからだ。死は生命に変化をもたらす主体だ。古き物を消し去り新しき物に道を確保する。現在は皆が新しき物だが、いつかそう遠くない将来皆は徐々に古き物になり消し去られる。芝居がかった表現で申し訳ないが正に真実だ。

皆の時間は限られているから誰か他の人の人生を生きることで時間を無駄にしてはいけない。教条主義の罠にはまってはならない。教条主義とは他の人々の思考の結果に従って生きることだ。他の人の意見という雑音に自分自身の内なる声をかき消されないようにしよう。そして最も重要なことは、自分の心と直感に従う勇気を持つことだ。心と直感は本当になりたい自分をどういうわけか既に知っている。その他すべてのことは二の次だ。

私が若い頃、全地球カタログという驚くべき出版物があった。私の世代の必読書の一つだった。スチュアート・ブランドという人物が、ここからそう遠くないメンロ・パークで制作し、詩を思わせる作風を施して世に送り出した。1960年代後半でパソコンも卓上印刷もなく、タイプライターとはさみとポラロイドカメラだけで作られていた。グーグル誕生の35年前のペーパーバック版グーグルのようなものだ。理想に満ちていて、巧妙な道具や偉大な概念が溢れている。

スチュアート達は全地球カタログの版を幾つか重ね、自然な成り行きとして最終版を出した。それは70年代半ばで私は皆の年齢だった。最終版の裏表紙は朝の田舎道の写真で、大の冒険好きならヒッチハイクをしていそうな場面だ。その下に次の言葉がある。「ハングリーであり続けろ。愚かであり続けろ」。これはスチュアート達が活動を終えるに当たっての別れの言葉だ。ハングリーであり続けろ。愚かであり続けろ。そして私は常にそうありたいと願ってきた。そして今、皆が卒業して新たに歩みを始めるに当たり、皆もそうあって欲しいと思う。

ハングリーであり続けろ。愚かであり続けろ。

ご静聴どうもありがとう。

2007-10-10

『現代のニ都物語』アナリー・サクセニアンは今?

1996年に出版された"Regional Advantage"『現代のニ都物語』は衝撃的だった。

ボストンの郊外をぐるっと廻る環状線はルート128と呼ばれ、1970-80年代はDEC、ポラロイド、ワングといったIT企業の本社が軒を並べるハイテクエリアとして栄えた。それがメインフレーム、ミニコンの衰退とともに衰退し、かわって1990年代からシリコンバレーが興隆する。これは地域特性によるものか、という問題提起をしたのが、アナリー・サクセニアン。

きょう、その人が今、UC Berkeleyの情報学科長(Dean)になっていることがわかり、本当に驚いた。もともとBerkeleyの出身者だそうだが、あれか10年、今もシリコンバレーで活躍するインド系、中国系の研究者が、その後母国にもどり、インド・中国のIT産業、半導体産業の立役者となっているという実証研究をしているようだ。いわく、"Regional Advantage in global economy"

中国本土からの留学生は博士号を取った後も米国に定住するケースが多い。そうした中、インターネットバブル崩壊、インド・中国政府の経済政策転換が引き金になって、自国に戻って会社を興すケースが増えているという。また、シリコンバレーの人脈と自国の産業界をつなぐことで、シリコンバレー以上のスピードでIT・半導体産業構造を改革する原動力となっている、との実証研究成果を公開している。

最近発表された論文、"From Brain Drain to Brain Circulation: Transnational Communities and Regional Upgrading in India and China "は要注目。

2007-10-07

MITのオープンコースウエアもいい!!














大学での講義は、講義の概要を記したシラバス、講義日程、講義資料集を事前に公開し、学生がコースを選択しやすいよう配慮されている。

米国大学では、特に学期最初の授業はこうしたマテリアルに沿って講義の概要を教授が学生に説明するセッションが持たれる。学生は何を学ぶことができるか、単位を取るためにはどれぐらい時間を割いて勉強する必要があるか、ここで判断して受講科目を取捨選択することになる。

きょう紹介するMITのオープンコースウエアは、すべての講義についてこれを公開するというもの。実際中を見てみると、すでに完了した講義のマテリアルが公開されており、講義で配付された講義ノートも公開されていて、ほぼ完璧に学生が入手するすべての資料が完備されている。要するに、講義での教授説明画像以外はすべてタダということ。

これに、昨日紹介したカリフォルニア州立大学のようなYouTubeの講義ビデオがあれば、学生とほぼ変わらない大学での勉学がいながらにしてできる、ということになる。

足りないものといえば、後は、毎週教授が一定の時間をオフィスアワーとして学生のために割いて、学生の側から自由に教授に相談する時間ぐらい。

ちなみに、MITスローンスクールのレベッカ・ヘンダーソン教授という人気教授の講義"Technology Strategy"の資料を見てみた。実にすばらしい!!!!もし今もう一度留学する機会があるなら、ぜひ受けてみたい講義。

2007-10-03

ITシステムは環境にやさしいことが問われる時代

Nicholas Carrという元ハーバードビジネスレビューの上級編集者だった人の"Does IT Matter?"という本を読んだ。企業の情報システムは経営の役に立っていないのではないか、という問題提起がされている。

Nicholas CarrのBlogもITに対する警鐘を鳴らす記事が多く、注目している。9月28日にはThe electric grid and the computing gridと題するITシステムの莫大な消費電力に警鐘を鳴らす記事が掲載されている。

今年、213人のCIO(欧州59%、アジア19%、北米19%)にアンケート調査したら、50%以上がどれだれITシステムが電力を消費しているか知らない、モニタしていないと回答したという。

Davd Sarokinという人がインターネット上に消費電力の推定値を発表しているところによると、全米のITシステムは年間約3500億kWhの電力を使っており、総電力消費の9.4%を占めると推定している。内訳は、以下のようでパソコンが大きな電力を使っていると見ている。

(1)データセンタサーバが450億kWh(13%)
(2)パソコン・モニタが2350億kWh(67%)
(3)ネットワーク機器が670億kWh(20%)

全世界のITシステムの電力消費推定値は8680億kWhで、全世界電力消費の5.3%を占めると推定している。

CIOの多くが今現在ITシステムの電力消費量をモニタしていない状況にあることも驚きだが、省電力を売りとするIT製品がでてきてはいるものの、もっと環境にやさしいITシステムを本気で研究開発しないと、ハードウエアはただ、電気代がIT費用の半分を占めるという時代がすぐくるのではないか?

2007-09-29

Google流会議の進め方


以前、Google20番目の社員として、Marissa Mayer,VPをご紹介しましたが、Business Week今週号に、Google流会議の進め方6か条が紹介されています。

Marissa Mayerさんは、週に70も会議を主催しているそうで、平均しても1日14会議、少なく見積もっても1時間に1つは会議をこなす勘定になります。ですから、こうした6か条を掲げて、少しでも会議参加者から成果を引き出す努力を惜しまないのだと思います。

こんな会議に一度でてみたいと思いませんか?以下は、Business Week記事の超訳です。

1.議事をあらかじめ決める(Set a firm agenda)
・出席者に何を討議してほしいか
・この会議のゴールは何か(何を達成したいか)

2.議事録係りを決める(Assign a note-taker)
・会議室にはマルチスクリーンを置く
・議事録係りは、プレゼン資料の隣のスクリーンに議事録をリアルタイムで表示する
・会議を欠席した人も議事録を見れば、決定事項、アクションアイテムがわかる

3.定期報告会議は5分、10分刻み(Carve out micro-meetings)
・定期報告事項は、5分で報告できるよう項目を細分化し、それだけを報告する
・定期報告を行う会議時間をブロックで取り、次々と報告を受ける
・こうすることで、飛び込み事項も5-10分タイムリーに報告する時間が取れる

4.FIFOで相談を受けるオフィスアワー設ける(Hold office hours)
・意思決定する前のアドバイスを受けたい人のための時間を毎日4時から取る
・ドアに名前を書き込んだ順に相談にのる

5.政治力でなくデータで勝負する(Discourage politics, use data)
・データに基づく合理的な意思決定を目指す(科学的な意思決定)

6.大時計で残り時間を表示(Stick to the clock)
・会議室にいくつも大時計を掲げ、出席者全員が時間に注目するよう仕向ける
・タイムキーパーは単に時間切れを告げる役ではない
・会議が成果に結びつくよう常にユーモアを交えて出席者を導く役回り

特に、オフィスアワーは大学で教鞭をとっていた頃から続けているとのこと。学生は教授の時間を自らとって積極的に教授に相談に行き、自分の研究テーマを切り開いていくというのが普通に行われています。

こうして、学生時代からの自分でものごとを考えていく訓練を積んでいく、これがイノベーションを生み出す基本的土壌だとわたしは思うのですが、いかがでしょうか?

2007-09-27

Googleで20番目に採用された社員:Marissa Mayerは今?


Marissa Mayer,VP, Search Products & User Experience。1998年入社。20番目の社員とのこと。どんな人なのか、今何をしているのか興味があり調べてみたら、とんでもないことがわかりました。

"Marissa Mayer"でGoogle検索すると10万件もヒットしますので、みなさんすでにご存知かもしれませんが、わたしは初耳でしたので、以下まとめてみました。

(1)Google入社は、スタンフォード(PhD)卒業と同時の1998年
(2)ミネソタ生まれ、ハイスクール時代はチアリーダで、かつディベートでミネソタ州代表
(3)Googleで、オタクとも議論できるオタク系才能と、経営トップに通じる話ができる両刀使い
(4)オフィスは社員が集まるコーヒーコーナー側にあり、ガラス張り
(5)才能ある社員が持ち込む新しいアイデアを週3回オフィスアワーを設けてアドバイス
(6)経営トップにTop100リストを作成してリリースの優先順位を常時提案
(7)VPになってから、1プロジェクト10分のレビューを実施し、よりユーザ満足度向上を目指す
(8)Googleへの入社希望者のレジメにすべて目を通すリクルータ役もこなす
(9)帰宅は毎日12:00(夜中)



ちなみに、Business Weekに記事がでており、会社における1日のスケジュールが公開されていましたので、再掲します。1日5時間しか眠らないで、どうしてイノベイティブな仕事ができるのでしょう?わたしは、1日8時間寝ていますが、たくさん寝ればよいというものではないことだけは理解しているつもりです。


8:00 a.m. Wake-up, get ready for work

9:00 a.m. Arrive at work, take conference call about a new technology

10:00 a.m. Meeting with Udi Manber, VP of engineering to discuss search,engineering staffing, etc.

10:30 a.m. Meet with Associate Product Managers to brief and prepare for upcoming international business trip

12:00 noon Product review with Larry and Sergey; review product direction and strategy and potential future collaborations

1:00 p.m. UI (User Interface) review to review/approve user interface designs/changes for multiple products

3:00 p.m. Meet with a new member of my team to welcome him and discuss career goals/trajectory

3:30 p.m. Meeting with Google Video product manager

4:00 p.m. Google Product Strategy meeting with Eric, Larry, Sergey, and other executives to go over weekly site traffic and a few special topics

5:00 p.m. Executive strategy meeting on Google China

6:00 p.m. Office Hours

8:30 p.m. Catch up on the day's e-mail

11:15 p.m. Visit to the Google Gym to run

12:00 p.m. Go home

12:30 a.m. Watch TV, do e-mail

3:00 a.m. Go to bed

2007-09-26

畑村流技術の伝え方



『失敗学』を新しい学問分野として打ち立てるべく、失敗を科学する道を究めている人。わたしがボストンのMITに留学していたとき、お世話になった方。

今から20年以上前のこと。当時畑村さんは東京大学機械工学科教授。文部省から派遣されて海外研修中の身分でしたが、日本から持参したものは、スキー靴と出刃包丁。スキーはプロ並みの腕前で、教え上手。冬のスキーシーズンには、近所のスキー場にご一緒させていただき、プロ指導員並みの手ほどきをいただきました。

お世話になった2つ目は、ロブスター刺身の作り方。ライブロススターの硬い殻のはがし方と、切り分けた頭を味噌を残してオーブンで丸焼きにする方法。とにかく研究熱心で、失敗を恐れず、問題を1つずつ解決していくねばり強さがある、とその際感じたものでした。

あれから20年、本当の研究分野は、「マイクロマシン」といって、半導体加工技術を駆使して、世界一小型のモーターをつくって体内に埋め込み人工臓器開発につなぐこと。きっと、失敗の連続だったのだと思います。そういう失敗を糧にして、最後は失敗そのものを科学してやろうという意欲を持ち続けていること、探求心が畑村さんのすごさだと思います。

一度NHKで、六本木森ビルの回転扉の事故を畑村さんチームが追いかける番組が放映されたのを見ました。回転扉の技術を輸入した日本企業が、それを日本の湿気が多い環境に適応するべく材質を変えたことが、回転物の重量を重くし、回転制動力が不足すつ事態を発生させた、と事故原因を特定するまでのドキュメンタリです。

番組の中でも、畑村さんは日本の設計者、製造現場、オリジナルの海外設計会社を自ら訪問し、実に多くの方と会話していることが印象的でした。いつもの調子で、人の話を聞く、話を聞きだすのがとてもうまいなあ、感じました。

先日、畑村さんの『組織を強くする技術の伝え方』という本を読みました。その中に、先輩との三つの対話法という記述があります。

(1)先輩が目の前にいて、わからないことを直接聞く
(2)できるだけ自分で問題を解いてみて、どうしてもわからないことだけを聞く
(3)先輩はすでにいないが、先輩だったらどうするか、思い描きながら問題を解く


と、あります。問題解決のプロである畑村さんから秘伝を伝授されたように思いました。みなさん、先輩とはどのような対話をされているのでしょうか?

2007-09-09

Irving Wladawsky-BergerのMIT講義に期待する


毎週注目するBlogの一つがIrving Wladawsky-BergerのBlog。わたしのBlogの右下にも、毎日見ているBlogとして掲載している。IBMを6月に退社後、MITの教授に就任したが、この9月秋学期からいよいよTechnology-based Business Transformationという講義を始めるらしい。最新のBlog記事からの抜粋は以下の通り。

Over the last few months I have been thinking a lot about leadership skills in anticipation of the graduate seminar I am teaching at MIT this Fall - Technology-based Business Transformation. In this course, I want to examine how to leverage disruptive innovations to significantly transform a business or even a whole industry. I want to focus, in particular, on what a company has to do when faced with a disruptive innovation so that it becomes the disruptor rather than the disruptee.

The course started last week. At our first meeting, I told the students that the overriding objective of this course is to develop or enhance their leadership skills so they can better deal with complex systems, complex markets and complex organizations. This entails a subtle balance of at least three kinds of skills - technical, management and social or people-oriented skills.

Can leadership skills be taught, or are these things that you are born with - you either have them or you don’t? If they can be acquired, how do you develop such skills? Each of us is better at some things and less good at others, but we can always improve our talents in a given area if we work hard at it. This applies to leadership as well.

先に紹介したクリステンセン・ハーバード大学教授やIBM元会長のガースナーの本が教科書に指定されている。どんな講義になるのか楽しみだし、彼のBlogにも内容が公開されることを期待したい。

2007-09-02

注目Blog:Bill Ives



Knowledge ManagementやWeb2.0を調べていて、Bill Ivesのサイトにたどり着いた。毎週欠かさず彼のBlogを読んでいるが、自称最初のビジネスBlogger、内容は専門のナレッジマネジメントだけでなく、音楽や食事、美術と幅広い。

最近の記事として、finetuneという音楽サイトが紹介されている。好きなミュージシャンの名前を入力すると、検索エンジンがそのミュージシャンのベスト曲はこれというリストを出力し、最もポピューラーな曲が流れ出すしかけ。ミュージシャンの簡単な説明も出るし、このミュージシャンが好きなら、こちらもいかがと、他のミュージシャンをリコメンドもする。

ちなみにカーペンターズと入力したら、ポピュラーな曲として以下が出力された。
1)Close to You
2)We've Only Just Begun
3)For All We Know
4)Top of the World
5)Superstar
6)Rainy Days and Mondays
7)Please Mr. Postman
8)Yesterday Once More

また、リコメンドするミュージシャンは、Air Supply、Barry Manilow、Neil Diamond、Linda Ronstadt...といった具合。そういえば、エアーサプライのAll Out of Loveはいいなあと、リコメンデーションに納得した。

好きな曲を自分のPlaylistとしてどんどん登録することもできるし、登録したPlaylistを公開して、人とPlaylistを交換することもできる。Soft Rock,Smooth Jazzといったジャンルを選択して、ラジオ局のように聞きながら、気に入った曲があったらそれを自分のPlaylistに追加するといった使い方もできる。自分の好きな音楽からスタートして、どんどん未知なる音楽、ミュージシャンと出会っていく。まさにそういう意味でSocial Network Serviceとなっていると感じた。

ぜひ試してみてください。やみつきになりそうですよ。

2007-08-26

クレイトン・クリステンセン:イノベーションのジレンマ



ハーバード・ビジネススクールの教授とは、いろいろな出会いがあった。クリステンセン教授とは、有名な"Disruptive Technologies"や"Disruptive Change"に関する論文発表前の1994年にボストンでお目にかかる機会があった。

2006年頃から、グローバルな競争市場が一層フラット化する中、『イノベーション』をキーワードとする国家の競争力、企業の競争力に関する議論が盛んだ。

同じお客さまに対して、同様な製品・サービスを提供しているある企業は利益を上げ続け、成長発展するのに、別の企業は売上も伸びず赤字におちいり、衰退するのはなぜか? ここ10年来、関心を持ち続けているテーマだが、発端はボストンでのクリステンセン教授との出会いだったことを思い出した。

以下は、5年前に読んだ本の読後感想。ところで、読後感想にもでてくる、ハードディスクの会社であるSeagateを中国の会社に売却する話がでている。これが、IBMがPC事業をLenovoという中国の会社に売却したとき同様、国家安全保障にかかわる事項で連邦政府が関与するとなっているらしい。企業の競争力、国家の競争力がグローバリゼーションによりあらゆる壁が低くなりだし、いろいろな構造問題をはらんできている。

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「イノベーション」というキーワードを考えるようになったきっかけはクリステンセン・ハーバード大学教授との出会いである。

1994年11月、1年ぶりで米国のボストンを訪問する機会があった。5年にわたる米国での海外勤務を終え帰国して1年がたっていた。その頃、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と謳われた日本の生産力に陰りが見え始め、モノづくりで常に日本にリードされていた米国は、EMS(製造アウトソーシングサービス)専門企業を生み出した。競争力で負けている製造を自社から切り離す動きをはじめた。IBMやHPは、工場を従業員ごとEMS企業に売却し、その換わりに売却した工場でEMS企業のやり方で同じ製品を作りつづけるというおもしろいビジネスをはじめた。

同じ製品を、同じ作業者が、同じ生産ラインで作りつづけるのに、IBMやHPの時代は赤字で、EMS企業に経営が変わるとなぜ黒字転換できるのかが、どうしても解けない疑問だった。解答をもとめてフロリダのJabil、カリフォルニアのSolectronなど、EMS企業を訪問し、実際に工場を見学させてもらった。その帰りにボストンに寄り、クリステンセン教授をお招きして議論する機会があった。

当時まだ准教授だったと記憶している。1995年1月にHBR(Harvard Business Review)に発表予定の原稿ゲラ刷りを紹介してくれた。それは、HDDでマーケットシェアNo.1のシーゲート社が、HDDの小型化という技術革新になぜ乗り遅れたのかを実証する論文だった。

HDDの最初のお客様は大型コンピュータメーカーであり、1978年当時のHDDはサイズ14インチ、容量200MBが主流だった。この頃8インチHDDは開発途上で、まだ容量20MBがやっとという状況。IBMをはじめとするHDDメーカーは開発の主力を14インチにおいており、新興企業のシーゲートは8インチだけに注力して、小型大容量化に邁進することになる。1985年頃には8インチが14インチを完全に凌駕する性能を実現し、14インチの技術に固執していた企業はマーケットから取り残された。
1985年といえば世の中ミニコン全盛の時。DEC、データジェネラルはじめ優良ミニコン顧客を押さえていたシーゲートは顧客の望む仕様のHDD開発に邁進するため、新しいPCの顧客ニーズに敏感に反応することはできない。この頃、HDD技術としては一層の小型・大容量化に関しての技術革新の芽が出始める。それが3.5インチHDD。ところが、ミニコンメーカーからすると8インチから5.25インチに小型・大容量化が進展したことで充分満足しており、これ以上小型・軽量にする必要性は感じていない。シーゲート技術陣がいくら顧客ニーズ調査を行っても、3.5インチ対応は不要との結論にいたる。
こうしてPCメーカーを主要顧客として3.5インチ技術革新を達成しようとしたコナーペリフェラルズはじめの新興企業は技術革新をやりぬくことができ、一方でマーケットシェアNo.1企業のシーゲートは技術革新に乗り遅れる事態となる。

クリステンセン教授はこうした勝組み企業が陥る落とし穴を「不連続な変化」(Disruptive Change)と名づけ、企業の盛衰はこの不連続な変化をいかに組織として乗り越える手を打つかにかかっていると説く。

よく企業の強みを「コンピタンス」という。コンピタンスとは、一つには抱えている技術者、技術力、設備能力、製品開発力、情報、ブランドなど「資源」と総称できるもの。二つには意思決定や、コミュニケーションや調整力を働かせ、組織を動かすプロセス、強みとする技術力や資源をつかって、顧客の求める製品・サービスを生み出していく「プロセス」そのものが企業の強みの要素となっている。三つ目は、どういう顧客を重要視するか、持てる資源を製品・サービスにどう転換するか、どういう仕事の進め方がよいやり方として誉められかといった従業員の持つ「価値基準」である。勝組み企業は、「資源」と「プロセス」と「価値基準」をどう組み合せれば顧客ニーズに適合するか、ヒット製品が生み出せるかを知っているので、強い売れる商品・サービスを連続して世に出せる。いわば立ち止まって考える必要などない、今まで通りのことをうまくやっていれば成功する安定した市場環境では、勝組み企業の連戦連勝が続くのである。

「不連続な変化」の中、勝ち続けるために

1)社内に全く異なる目標を掲げた別チームをつくる
2)分社化して別会社をつくる
3)他社を買収して他社の強みを生かす

日本企業は、カンパニーワイドのプロジェクトを発足させ、組織の壁を越えて、新しい革新的取組みをはじめている。まさに「不連続な変化」が起きているグローバルな市場で生き残るには、従来の延長線上にない新しい勝パターンを作るためである。顧客(販売店)の先の顧客を見ることなしに、真の顧客ニーズの把握ができないこと。さらには現在の重要顧客だけでなく、新たに各産業分野で起きている「不連続な変化」を見据え、次なる勝組み企業はどこになるかの見極めが大切なことをこの本は教えてくれる。自社のプロセス改革だけを考えたのでは生き残れないことは当たり前として、どの顧客ニーズを実現するかも改革の中心に据えた取組みが必要である。

2007-08-25

思い出のCampus:Princeton University












ニューヨークからフィラデルフィアに向かう途中にプリンストンがある。車をプリンストンに向けて走らせていると、道の両側に街路樹の並木が続き、なんとはなしにアカデミックな雰囲気が漂ってくる土地柄。

知人が牧師を目指してプリンストン大学で勉強中だったこともあり、ニューヨークで生まれたばかりの娘のベビー用品を借り受けるため出掛けた。大学構内は、ゴシック建築の図書館と大きな教会が立派だ。

それよりなにより、家族寮で知人と話していると、目の前の道を昔、アインシュタインが毎日散歩していたそうだ、という話がでてくる。白い髪をなびかせ、ソックスをはかずに歩くアインシュタインの姿が見えるようだった。

大学に近接して1933年から没年の1955年までアインシュタインが研究したInstitute for Advanced Study(IAS)があるという。今ホームページで調べると、アインシュタインの他に、ゲーデル、オッペンハイマー、フォンノイマンという科学の世界で有名な人ばかりでなく、ジョージ・ケナンもここに所属していたことがわかった。

アインシュタインとゲーデルが仲良く一緒に散歩したIAS前のキャンパスは、こんなだったかと今また当時の記憶を呼び覚ましている。

2007-07-24

IBMのTransformation推進役:Linda Sanford

IBMのService Science研究について先にご紹介したが、Service Science研究成果は、IBMが提唱する21世紀に生き残る企業が目指すべき”Innovation“に関する取り組みを集めたページの一部となっている。

その中に、実業界におけるInnovation事例を紹介する項目があり、IBMの社内改革担当役員であるLinda Sanford, SVPがMITに出向いて講演したVideoが掲載されている。IBM社内をどう改革したか、参考になるので紹介する。

ここで、なぜMITに出向いてIBMの役員が講演するかというと、IBMで長くマーケティングを担当してきた、Irving Wladawsky-Berger氏がリタイアしてMIT教授に就任したことが理由と推察される。

講演者のLinda Sanford, SVPがメインフレームやストレージ事業担当役員として社内改革を推進し、Irving Wladawsky-Berger, VPが社内管理効率化を優先する縦組織から、顧客に軸足を移してグローバルサービス提供ができるよう、顧客接点をより顧客よりに変えていくマーケティング改革担当、との役割分担だったという。

Irving Wladawsky-Berger現MIT教授のBlogは、毎週月曜日更新され、大変興味深い情報が発信されています。ぜひこちらもご参照ください。

なお、Linda Sanford, SVPの講演Video(2006年10月17日:講演時間90分)はこちら、で現物をご確認ください。ちなみに、Linda Sanfordは2006年1月に本を出版しています。おもしろそうです。Let Go To Grow: Escaping The Commodity Trap (Ibm Press)

-----------Linda Sanfordの講演概要-------------

1. IBM社内のトランスフォーメーションの背景(21世紀に生き残るには)

①IBMをハードウエアの会社からサービス会社につくりかえる
②IBMは世界各国にミニIBMをつくり、人事・販売・経理・開発・生産・保守まで国別に別々のシステムをつくり事業運営するマルチナショナルカンバニーで、重複の無駄があった
③ハードウエア事業は、コモディティ化が進み、価格競争に晒され、利益率が低下する一方、世界経済はサービス産業比率が増大し、サービス事業の増大なくしてトップラインの増大はない
④技術革新、特にインターネット革命に乗り遅れては生き残れない。コモディティ化による価格競争が激化する以前の1995年から1998年に間にFortune500社に選ばれた1008社の内、今も生き残っている企業は16%しかない(84%は会社倒産)という統計がある
⑤IBMはコマンド・コントールによる社内管理コスト最小化を図る階層型組織の会社であったが、21世紀、グローバル化が進展し、技術革新が進む中、会社の構造自体を見直し、他社・顧客とも連携して、他社に一歩先んじたサービスを生み出すイノベーションを起こせる会社だけが生き残れる。(そうしないと、急速な変化、先行き不透明な世界で生き残れない)
⑥キーワード
•オープン
•コラボレーション
•部門の壁を打ち破る(業際)
•グローバル

2.IBM内でイノベーションを起こす試み
①社内でイノベーションを起こすエンジンとは
•製品
•サービス
•業務プロセス
•ビジネスモデル
•マネジメント・企業文化
•ポリシー
従来はなにからなにまで全部社内で自らやることで管理コストを最小化したが、今は人事、経理業務など専門の社外サービスを利用するなどして、自ら強みを発揮できる業務に特化し、他社よりも早く変化を生み出し競争力につなげる、ビジネスモデルのイノベーションが最も重要と考えている

②IBMのトランスフォーメーションから学んだこと
•IBMは2002年から第2段階のトランスフォーメーションを開始した
•業務プロセス変革と、技術革新と、会社価値(Value-based Culture)明確化の3本立てで同時に改革を推進することが重要
•会社価値明確化とは、例えば売上利益のような業績もさることながら、プロセスを改善することにフォーカスするようインセンティブシステムを変更すること

③IBMのビジネスモデル変革
•従来はBack Officeの基幹業務に管理の重点があったが、これをFront Officeに軸足をうつすこと
•SCMコストの分析、見える化はかなりできたが、顧客、売上増大に対する分析、見える化ができていない
•どうすれば売上増大が図れるか、他社、市場平均を上回る売上成長を実現できるかが分析できるようにし、セールスリソース配置の最適化、顧客カバレッジの最適化が図れるようにすることが必須
•IBMはそのために、セールスの前線に立つ従業員に、必要な会社経営情報を開示し、自らの判断で顧客へよりよい対応サービス提供に向けた行動が取れるように、前線社員のエンパワーメントを図った
•一方、back office業務は徹底して業務標準化を図り、シェアードサービス化した
•人事はノースカロアイナローリーに集約、経理はブラジルに集約化した
•次に、グローバルに社内リソースを活用できるようなしくみをつくった
•そのために、いつでもどこでも業務ができるように業務環境を整備した
•最後にコマンドコントロールに変わる業務遂行を支える基本として、会社価値を従業員全員に徹底し、業務指示によって動くのではなく、会社価値によって今何をすべきか判断できるようにした
•2006年のCEOサーベイ結果を見ても、50%を越える世界のCEOはイノベーションが社外との連携から起きると考えている
•自社の社員がイノベーションを起こすとの期待は一番大きいものの、次いで顧客、ビジネスパートナーとの連携から起きると考えており、社内の研究開発から起きるとの期待より、社外連携への期待の方が大きい
•こうした社外連携によるイノベーションを実現するためにも、第一線の現場従業員が顧客やビジネスパートナーと迅速に行動できる、自ら判断して行動できることがイノベーションカンパニーになる必須要件である