2007-07-11
ルー・ガースナー:巨象も踊る
今から5年ほど前、IBM元CEOのガースナーが書いたIBM改革物語「巨象も踊る」が日本で出版され、むさぼるように読んだ覚えがあります。
そして、以下の文章は、たくさんの人にぜひ読んでほしいと思い、読後すぐ書いた文章です。今、読み返してもその通りと思うことばかりですので、ここに再掲します。
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IBMは米国にとって、とてつもなく重要な会社で、一企業の浮沈をかけた経営改革とはわけが違う。米国の盛衰そのものを左右しかねないという危機意識をもって、米国産業界上げて、トップ(CEO)選びが進められたことがまず印象的でした。
次に、普通この手の成功物語は、ゴーストライタが書くと相場が決まっていますが、本の中で紹介されるエピソードを含めて本人が、かなりの情熱を傾けてこの本を書いた、と感じられたことに驚きました。3点目は、93年3月CEO就任の日には、その後の経営改革の柱となる大まかな改革項目が、ガースナーには見えていた、または少なくとも予感されていたこと。4点目は、その難しい改革を完遂するには、自らが大なた振って、永年IBM Wayとして大切にされてきた行動規範までも変える決意でCEOを引き受けたこと。5点目は、CEOを引き受けた時に、どうなったらCEOの座を降りるかをすでに考えていたこと。
<IBM再生の戦略>
足掛け9年にわたるCEOとしての経営改革だったわけですが、大きな戦略的な意思決定は以下の5点だったと思います。
①会社を一体として保持し、分割しない。IBMの事業を切り売りしていくのではなく、オープン・ダウンサイジング化の波で顧客が求めているのは、すべてを引き受けてグローバル最適化を推進してくれる会社、サービスであるとの考え方にたち、トータルソリューション提供可能なIBMを目指す。
②IBMの基本的なビジネスモデルを変える。従来のハードウエア中心の収益構造をサービス中心にシフトする。
③業務プロセスを再構築する。これまでの地域別販売会社がローカル最適化を優先するやり方を、One IBMとしてグローバルに全体最適化することを優先する。そのためにグローバル・ビジネス・トランスフォーメーション(GBT)のための専任役員を任命し、One IBMを目指した7つの経営改革を推進する。
④生産性の低い資産を売却して資金を確保する。One IBMとして収益確保を図る上での選択と集中の判断基準は、利益最大化であり、それに反する事業は売却する。IBMの半導体事業部門(IBM Microelectronics)も例外でない。
⑤あらゆる行動を顧客の観点から見直し、社内向きの企業から、市場主導の外向き企業に変える。
<IBMの経営哲学と経営方法>
ガースナーは93年CEO就任後の最初の取締役会で、ここにすわっている方は全員やめてもらうと宣言した、と聞きました。なぜならIBMをだめにしたのはみなさんだから。そして5年以内に全部の経営者を交代させたそうです。CEOに就任して最初にIBMの経営幹部に話し掛けたメッセージに、ガースナーの会社経営についての思いがすでに明確に表現されています。
①手続きによってではなく、原則によって管理する。
②われわれのやるべきことのすべてを決めるのは市場である。
③品質、強力な競争戦略、計画、チームワーク、年間ボーナス、倫理的な責任の重要性を確信している。
④問題を解決し、同僚を助けるために働く人材を求めている。社内政治を翻弄する幹部は解雇する。
⑤私は戦略の策定に全力を尽くす。それを実行するのは経営幹部の仕事(私に問題の処理を委ねないでほしい。問題を横の連携によって解決してほしい。問題を上に上に上げていくのはやめてほしい。)
<IBMの経営改革イニシアティブ(GBT)>
IBMのGBTはガースナーCEOをリーダとし、CFO、戦略担当、事業担当役員で構成される経営トップ主導で推進され、7つの改革を担当する専任のBusiness Transformation Executiveをアサインし、IBM全体で共通購買プロセス、SCMプロセス、受注出荷管理プロセス、経営管理プロセス等を構築し、会社全体の経営目標に改革目標を織り込む形で推進された。従って、例えば購買改革では購入資材はすべての事業ラインで同一の品番、同一の取引先コードが採番され、どこからいくら総額購入しているかを全社把握し、一律10%購入金額を削減するようなトップダウンの取組みがなされた。そのためには全社一律にSAP導入が必要という判断はガースナーの指示であり、反論はなし。”Do or Leave”(会社を去れ)といわれるぐらいトップダウンで推進されたそうです。
①Market Planning (分野戦略)
②Integrated Product Development(開発改革)
③Integrated Supply Chain(SCM改革)
④Procurement(購買改革)
⑤Fulfillment(オーダマネジメント、経営管理改革)
⑥Customer Relationship Management(顧客管理改革)
⑦Web Integration(Web統合)
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