2007-07-13

松岡正剛・平尾誠二:イメージとマネージ





またまた4年前に読んだ本ですが、元日本ラグビー代表監督の平尾誠二と、編集工学創設者の松岡正剛との対談。マラソンが人生に譬えられるように、スポーツは生きること、特に人とどう関わるかを教えてくれる。会社生活、会社経営にとっても、はっとさせられるヒントが多い。

松岡正剛は、10年ぐらい前から注目している人。『松岡正剛の千夜千冊』には圧倒させられっぱなし。千冊を越える本、いやその本の背景まで含めて、松岡流に編集して示してくれる。千夜千冊の目次を見て歩くだけでも楽しい。まだまだこんなにおもしろい本があることを教えてくれます。

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毎年正月は1日の天皇杯サッカー、実業団駅伝、2日、3日は箱根駅伝とスポーツ番組ばかりみていて家族から顰蹙をかっています。それでも見逃せないのが全国高校、大学選手権ラグビー。わたしにとって、ラグビーといえば思い出すのが平尾誠二です。
平尾誠二は、伏見工業高校3年の時、全国高校選手権制覇、続く同志社大学時代には全国大学選手権大会三連覇を達成。さらに神戸製鋼を89年から95年の7年間、日本選手権大会連続制覇に導きました。従来の「型のラグビー」を打破して、「スペース」を重視する自在のライグビーを作り上げたことで知られています。

絶妙な対談:平尾誠二と松岡正剛

スポーツ観戦がきらいな方にもぜひ読んでいただきたいのが、集英社文庫にもなった松岡正剛との対談「イメージとマネージ」です。松岡正剛は1987年に編集工学研究所を設立し、日本文化、情報文化を縦横に切り結んで新世界を創出する「編集工学」なる学問分野を確立しつつある偉人。(ぜひ一度会ってみたい人のひとり)二人の対話は縦横無尽でとどまるところを知りません。例えば以下のように。

平尾 「見る」ということについていえば、ぼくはもともと目がいいんだと思います。
松岡 実際の視力がいい?
平尾 ええ、相手の表情がよく見える。遠くでも、ね。だから、その表情がそいつのふだんの表情が変化したのか、その時の状況を知って変化したのか、そういうことまで見ようとしているんですね。
松岡 そう?それはすごいね。まさに「色を観て心を窺う」(観色窺心)なんだ。

平尾 たしかに「自由」とか「逸脱」は重要ですね。とくにぼくの考えてきたラグビーはそれをめざしている。しかし、ぼく自身はね、ラグビーは決してうまくないんです。ただ、いろいろ考えて、いろいろ試みている。そのことについては熱中できるんです。
松岡 その「試み」がいま日本中に欠乏している。ぼくは、その試みのことを「編集」と言っています。編集というのは「関係を発見し続ける」ということです。ぼくはね、平尾ラグビーは「編集ラグビー」だろうと思うんです。

<平尾のラグビー語録>
•集団で物事をすすめていくには、原理原則みたいなものをはっきりさせなきゃいけない。
•その次の作業としては、その原理原則をみんなに理解してもらう、コミュニケーションが大事。
•しゃべったり、説明するだけがコミュニケーションではない。一から十まで説明するだけならそんなに難しくない、コミュニケーションでもっとも大事なのは「説明するタイミング」
•タイミングとは相手が引いているときでなく、ちょっと前に出てきているときを選ぶこと。
•まず知りたいという欲求をどう誘発させるか、そしてみんなが知りたいと思ったときに説明をぶつける。この連続です。例えば、さわりだけ説明しておいて、なぜうまくいったかという手の内は伏せておく。「じゃあ、このへんで練習終わっとこう」とちょっともったいぶる。そうすると練習時間が終わってもみんなやってるわけ。でも、なかなかうまくいかない。そこで、ぼくがまたひょっこり出ていって、おもむろに、これはこうだからと疑問を解決していく。
•常に「間」を取りながら、ある瞬間に詰めるんです。「間」というのはあけるんじゃなくて詰めるんです。それが「間」の本質です。
•いったん「ふくみ」や「保留」や「仮留め」の部分をつくる。そうすると「ふくみ」に対して相手のイメージが対応してくるので、一発で説明するよりも、すでに受入態勢が準備できているんですね。
•最近、みんなによく言うんですが、すごい戦術とか戦略を考えついたとします。でも、それだけではまだやるべきことの20%にしかすぎない。それを仲間にどう説明して、自分のイメージどおりに実現できるか、そこが大事なんだよと。
•海外で新しい戦略を使っても1回は通用するけど、2回目は全く通用しなくなっている。チームとしてのシステムはもっているけども応用がきかない。個人としてしっかりとした教育をして、どういう状況でも応用できるだけのシステムを身につける必要があります。
•日本はとりあえず一発勝負ではなんとか勝てる。ところがワールドカップでは予選は三戦あるから、三つの戦い方を用意しないとダメ。さらに三つの戦術を抜粋して四つ目をつくるといった編集による「多様性のラグビー」をつくっていく必要がある。
•それには練習の時からシナリオを持ち、意識した練習を組み立て、選手がつねにどんな場面でも考える習慣をもちつづけるようにすることが必要なんです。

これ以上の種明しはやめておきますが、514円の文庫本からこんなにたくさんのことを学んでもよいものでしょうか?

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