2007-07-29

思い出のコンサート:Cirque du Soleil









思い出のコンサートというより、ショーかもしれない。東京の代々木体育館横にカラフルなテント小屋が出現し、大勢の人の流れが原宿から延々と続く異様な光景がそこにはあった。

2003年にシルク・ドウ・ソレイユの『キダム』を見に行った。感動した。

キダムを見る半年前、西元まり著『アートサーカス:サーカスを超えた魔力』(光文社新書)が出版され、おもしろく読んだ。あのすばらしい舞台裏には厳しい競争と選択があることを知り、ぜひ一度本物の舞台を見てみたいと思った。以下は、その時の読後感想。Back Stageにこそ、芸術を生み出すイノベーションの源泉がある。

まだシルク・ドウ・ソレイユの舞台をご欄になっていない方、オフィシャルホームページでぜひその芸術の一端をご欄ください。

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『シルク・ドウ・ソレイユ』のシルクとはフランス語でサーカスのこと。直訳すれば「太陽のサーカス」とでもいうのだろうか。カナダのモントリオールから世界に、この新しい芸術が発信されたのは1984年。日本には1992年の『ファッシナシオン』、94年『サルティンバンコ』、96年『アレグリア』、2000年にはモーニング娘。をファンクラブ代表にして『サルティンバンコ2000』というツアーショーが日本各地で行われ、124万人の観客を動員したというから、ご欄になった方も多いのではないか。

サルティンバンコ2000だけでもざっと著者が試算したチケット売上は100億円を越える。現在、40カ国以上から集まった2400人を超える雇用者を抱えた企業集団としてのシルク・ドウ・ソレイユは、見る人をアッと驚かせる芸術としてのサーカスを作り上げただけでなく、それを支える事業システムを作りだしたことでも注目される。

わたしのシルク・ドウ・ソレイユとの出会いは、サクラメント滞在中の98年。自宅のケーブルテレビの番組で、見るとはなしに見はじめたら、最後までやめられなくなった覚えがある。今この原稿も、『サルティンバンコ』のサウンドトラック版のCDを聞きながら書いている。最初から最後まで、切れ目無く続くアクロバット演技、空中ブランコの演技、そして空中バレーのようなエアリアル・フープ(空中で輪を使う演目)のあいだ中、ルネ・デュプレの幻想的な音楽が舞台を一層きりっと引き締める。

98年は、何度かサクラメントと成田を往復したが、サンフランシスコからの帰りの機中で、一度NHKの『新クイズ日本人の質問』という番組にレギュラー出演している女優さんと席を隣り合わせた。その筋に疎いわたしはそれとは知らず、食事の時に「お仕事ですか」などと話かけたら、ラスベガスでシルク・ドウ・ソレイユの『オー』を観ての帰りとのこと。なんと、そのときはじめてシルク・ドウ・ソレイユという名前を教えてもらい、ケーブルテレビの番組が『サルティンバンコ』であることをおそわった次第。

『“O”(オー)』byシルク・ドウ・ソレイユ
98年にスタートした、ラスベガスのホテル「ベラッジオ」内の専用劇場での常設ショーで、専用劇場の特殊プールは深さ7.6m、奥行き30m、幅46mの楕円形で、670万トンもの水をたたえているという。その水の中から床が上がってきて、水が消えるというから、想像したくともできない大掛かりな仕掛けのようだ。ぜひとも観てみたい。シンクロのオリンピックメダリストも出演しているという。この本の著者は、シルク・ドウ・ソレイユを一目見てすっかりとりこになったそうで、それからというもの突撃取材を情熱的に繰り返し、シルク・ドウ・ソレイユの歴史から、出演者として選ばれるまでの厳しいオーディション・プロセス、選ばれた後のアーティストたちの人となり、技術をマスタするまでの厳しいトレーニングまで、すっかり調べ上げている。

こうした厳しいオーディションを潜り抜け、日本人も舞台に出演しているというから頼もしい。92年バルセロナ五輪でシンクロ銅メダルを獲得した奥野史子もその一人。ラスベガス入りしてホテル「ベラッジオ」のプールでの初めての練習を行った奥野は感想をこう語っている。

『さすがに緊張しました。水中にはいると衣装がひじょうに重いので泳ぎにくかったのですが、泳ぎやすさよりも観客に対する見た目というか、美しさ、おもしろさを重視しているあたりは、やはりスポーツというよりもショーなのだということを実感しました。同時多発テロがあったすぐ後で、当初はこちらに来ることも心配していましたが、ショーは連日ほぼ満員で、最後のカーテンコールはスタンディングオベーション。こんな状況は想像していなかったので、とてもうれしいです。観客の歓声は私たちのパワーの源となり、もっと頑張ろうとする力を与えてくれます。とにかく楽しいのひとことです』

観客の歓声に押しだされて、よしもっと頑張ろうと、より一層自分の力が出せることが、ショーのすばらしさなのでしょう。今、日本では2月から『キダム』が連続講演を続けています。ぜひとも代々木のビッグトップに出かけていって、生のシルク・ドウ・ソレイユを観てみたいものです。みなさんも一度おでかけになってはいかがでしょうか。きっと全く新しい世界が、みなさんを待っていると思います。そこで感動して、よおーし、もう一度頑張るぞ、という思いにさせられること、うけおいです。

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