2007-09-26

畑村流技術の伝え方



『失敗学』を新しい学問分野として打ち立てるべく、失敗を科学する道を究めている人。わたしがボストンのMITに留学していたとき、お世話になった方。

今から20年以上前のこと。当時畑村さんは東京大学機械工学科教授。文部省から派遣されて海外研修中の身分でしたが、日本から持参したものは、スキー靴と出刃包丁。スキーはプロ並みの腕前で、教え上手。冬のスキーシーズンには、近所のスキー場にご一緒させていただき、プロ指導員並みの手ほどきをいただきました。

お世話になった2つ目は、ロブスター刺身の作り方。ライブロススターの硬い殻のはがし方と、切り分けた頭を味噌を残してオーブンで丸焼きにする方法。とにかく研究熱心で、失敗を恐れず、問題を1つずつ解決していくねばり強さがある、とその際感じたものでした。

あれから20年、本当の研究分野は、「マイクロマシン」といって、半導体加工技術を駆使して、世界一小型のモーターをつくって体内に埋め込み人工臓器開発につなぐこと。きっと、失敗の連続だったのだと思います。そういう失敗を糧にして、最後は失敗そのものを科学してやろうという意欲を持ち続けていること、探求心が畑村さんのすごさだと思います。

一度NHKで、六本木森ビルの回転扉の事故を畑村さんチームが追いかける番組が放映されたのを見ました。回転扉の技術を輸入した日本企業が、それを日本の湿気が多い環境に適応するべく材質を変えたことが、回転物の重量を重くし、回転制動力が不足すつ事態を発生させた、と事故原因を特定するまでのドキュメンタリです。

番組の中でも、畑村さんは日本の設計者、製造現場、オリジナルの海外設計会社を自ら訪問し、実に多くの方と会話していることが印象的でした。いつもの調子で、人の話を聞く、話を聞きだすのがとてもうまいなあ、感じました。

先日、畑村さんの『組織を強くする技術の伝え方』という本を読みました。その中に、先輩との三つの対話法という記述があります。

(1)先輩が目の前にいて、わからないことを直接聞く
(2)できるだけ自分で問題を解いてみて、どうしてもわからないことだけを聞く
(3)先輩はすでにいないが、先輩だったらどうするか、思い描きながら問題を解く


と、あります。問題解決のプロである畑村さんから秘伝を伝授されたように思いました。みなさん、先輩とはどのような対話をされているのでしょうか?

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