このBlogでもご紹介しましたが、「鳥はる」で久しぶりに会った仕事の仲間との会話を思い出しています。
仲間の一人がなにげなく、「最近どんな本を読んでいますか?」と聞いてきたのです。その時は、丁度ダラス出張から帰国したばかりでしたので、小説、それも佐伯泰英の時代小説と答えたわけです。
ところが、実は問いを発した仲間はまじめな人で、最近どんなことを考えていますか、何をおもしろがっていますか、という意味の問いだなと直感的にわかり、単に読んでいるいる本の書名を答えても、答えになっていないなと感じたわけです。ですが、その時は、おざなりな答えでお茶を濁して終わってしまい、その後もなんとなく、仲間の問いが気になっていました。
そんなある時、いつも目を通しているNew York TimesのOpinionというコラム欄に、Brian Greeneというコロンビア大学物理学教授の文章が掲載されているのが目にとまりました。
イランの戦場にある米軍兵士からの手紙に、砂漠の中で彼が書いた物理学の本を読んでいること、そのことが毎日生きる糧になっていること、宇宙がどのようにできたか、宇宙はこの先どうなっていくかを砂漠の戦場で考えることが、自分の人生の一部だ、という手紙に感動して、Brian GreeneはNY Timesの記事の中で、次のように語ります。
The reason science really matters runs deeper still. Science is a way of life. Science is a perspective. Science is the process that takes us from confusion to understanding in a manner that’s precise, predictive and reliable — a transformation, for those lucky enough to experience it, that is empowering and emotional. To be able to think through and grasp explanations — for everything from why the sky is blue to how life formed on earth — not because they are declared dogma but rather because they reveal patterns confirmed by experiment and observation, is one of the most precious of human experiences.
ここで、鳥はるでの会話に戻れたら、きっとこう答えるべきだったかなあ、と今は思っています。
「実は、最近Brian Greeneの”The Fabric of the Cosmos"を読み始めたのだが、これが、なかなかいいんだよね。300年の科学の歴史、いやきっと人類が誕生してからずっと疑問に思ってきたこと、『この世界は、どうやってできたのか』『この世界はこの先どうなるのか』といったことを、体当たりでまじめに解き明かそうとしている。すごいぜ!」
学生時代には、理論物理とか量子力学は、大の苦手でした。20年ぐらい前にアメリカの大学でもう一度勉強しなおしたとき、英語のテキストで最初から勉強しなおすことで、苦手意識を払拭した覚えがあります。
最初から英語で学ぶと、違ったおもむきの世界が広がっていました。日本の大学教育と異なり、この分野へはいっていく入り口もいろいろ用意されていて、自分にあった入り口からすんなりとはいっていけることもあるようです。
それ以来、科学に関する読み物は英語となっています。そして、なぜか仕事のごたごたが高じると、科学に関する本を手に取ることがしばしばあります。
砂漠の兵士と同じ心境なのかもしれません。会社で仕事するというわたしの生活は、いったいこの先どうなるのか、仕事のごたごたはどう解決すればよいのか、つぎつぎとやってくる難題をずばっと解決する方策は見つからないものか?
わかりませんが、アインシュタインがUnified Solutionを求めて模索していた毎日の生活も、意外とわたしたち普通人の毎日の生活と変わらない、こんな悩める毎日だったのではないでしょうか?
大きな違いは、解決策を後の世のだれもが使える方程式に定式化したこと。会社の難題を解決する方策をこのような後世の人も使えるよう定式化できないものかとの思いが、科学の本を手にとる本当の理由かもしれません。
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